幸せになる勇気 岸見一郎 古賀史健 ダイヤモンド社

引用①
「いまの自分」を積極的に肯定しようとするとき、その人の過去はどのようなトーンで彩られると思いますか?…答えはひとつ。すなわち、自分の過去について「いろいろあったけど、これでよかったのだ」と総括するようになる。…それはあなたが、「いまの自分」に満足していないからでしょう。…理想には程遠い「いまの自分」を正当化するために、自身の過去を灰色に塗りつぶしておられる。…「もしも理想的な学校で、理想的な教師に出会っていたら、自分だってこんなふうじゃなかったのに」と、可能性の中に生きようとしている。

引用②
自分を愛することができなければ、他者を愛することもできない。自分を信じることができなければ、他者を信じることもできない。…自己中心的な人は、「自分のことが好き」だから、自分ばかりを見ているのではありません。実相はまったく逆で、ありのままの自分を受け入れることができず、絶え間なき不安にさらされているからこそ、自分にしか関心が向かないのです。

引用③
あなたは仕事を通じて所属感を獲得しようとしている。仕事で成果を収めることによって、自らの価値を実証しようとしている。…原則論から言えば、仕事によって認められるのは、あなたの「機能」であって、「あなた」ではない。より優れた「機能」の持ち主が現れれば、周囲はそちらになびいていきます。それが市場原理、競争原理というものです。結果、あなたはいつまでも競争の渦から抜け出すことができず、本当の意味での所属感を得ることもないでしょう。…他者に「信頼」を寄せて、交友の関係に踏み出すこと。…われわれは仕事に身を捧げるだけでは幸福を得られないのです。

引用④
自立とは、「自己中心性からの脱却」なのです。…だからこそアドラーは、共同体感覚のことをsocial interest と呼び、社会への関心、他者への関心と呼んだのです。われわれは頑迷なる自己中心性から抜け出し、「世界の中心」であることをやめなければならない。…「わたし」から脱却しなければならない。甘やかされた子ども時代のライフスタイルから、脱却しなければならないのです。…われわれは愛によって「わたし」から解放され、自立を果たし、ほんとうの意味で世界を受け入れるのです。

引用⑤
すべての出会いとすべての対人関係において、ただひたすら「最良の別れ」に向けた不断の努力を傾ける。…そう思えるような関係をこれから築いていくしかないでしょう。「いま、ここを真剣に生きる」とは、そういう意味です。

小説のようなストーリー性とドラマティックさがあって読みごたえがあった。答えは与えられるものではなく自らの手で導き出すものだという言葉に、厳しさと自らの考えの甘えを痛感しつつ、一歩を踏み出し続ける覚悟を与えてくれた気がする。